映画「青春の殺人者」

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映画「青春の殺人者」

白川和子が結婚後の復帰作に選んだ作品は映画「青春の殺人者」でした。「太陽を盗んだ男」で知られる長谷川和彦が監督を務め、水谷豊と原田美枝子が主演しました。本作は長谷川和彦監督の第1回監督作品で、1974年に千葉県市原市で実際に起きた親殺し事件を下敷きにした中上健次の短編小説「蛇淫」をもとに、田村孟が大胆に脚本化しました。深い理由もなく、行きがかりから両親を殺してしまった青年とその恋人の末路を、突き放した視点から描いています。

ストーリー

斉木順は親から与えられたスナックを経営する22歳の青年です。順は店の手伝いをする幼なじみのケイ子と関係を持っていました。ある日、順が父親に取り上げられた車を取り返すために実家へと出向くと、両親が彼を待ち受けていました。父と母はケイ子と順を別れさせるためにわざと彼を呼び寄せたのでした。母は順に、早く別れないとあの体に蛇のようにぐるぐる巻きに憑りつかれると忠告します。話し合いは平行線のまま、順は母が野菜を買いに行った隙に父を殺してしまいます。帰って来た母はその光景に驚愕しますが、自首するという順を引き留めて二人で静かに暮らそうと懇願します。大学へ行って、大学院に行って、時効の15年が経ったら嫁を貰えばいい、と。しかし、ことケイ子の事となると母は異常な程に嫉妬心を露わにします。ついに母は錯乱し包丁を手にするのでした。順はもみ合っている内に母も殺してしまい・・・。

キャスト

  • 斉木順・・・水谷豊
  • 順の父・・・内田良平
  • 順の母・・・市原悦子
  • 常世田ケイ子・・・原田美枝子
  • ケイ子の母・・・白川和子
  • 宮田道夫・・・江藤潤
  • 石川郁子・・・桃井かおり
  • 日高徹・・・地井武男
  • 漁師の女A・・・高山千草
  • 漁師の女B・・・三戸部スエ

スタッフ

  • 監督・・・長谷川和彦
  • 製作・・・今村昌平、大塚和
  • 企画・・・多賀祥介
  • 助監督・・・石山昭信、杉田次郎、矢野広成、草水良一、相米慎二
  • 脚本・・・田村孟
  • 原作・・・中上健次
  • 撮影・・・鈴木達夫
  • 音楽・・・ゴダイゴ
  • 美術・・・木村威夫
  • 録音・・・久保田幸雄
  • 照明・・・伴野功
  • 編集・・・山地早智子
  • 制作進行・・・榎戸耕史、平山秀幸、飯塚勇

撮影にまつわるエピソード

撮影は舞台となった市原市などを中心に行われ、全編ロケでの撮影となりました。今では考えられないようなゲリラ的な撮影が多く、ラストシーンのスナックに火をつけて燃やす場面も許可を取らずに一発撮りでした。平日の夕方、道路沿いに建てられた建物が勢いよく燃えたため、周辺は車が大渋滞になったそうです。製作費は当初2000万円前後を予定していましたが、結局3500万円かかりました。長谷川は1500万円を借金して撮影に挑みました。そのため、監督はもちろん、主演の水谷もノーギャラだったそうです。撮影当時、長谷川監督が30歳、水谷が24歳、原田は17歳でいた。1976年度キネマ旬報ベスト・テンの第1位を獲得しましたが、インタビューの際、長谷川は「他にいい作品がなかったからでしょう。1位、2位、3位、4位なしの5番目の1位でしょう。そう思っています。」と答えています。

感想

中々トラウマになる映画でした。主人公順の母親役の市原悦子さんがすごかったですね。順に向かって行って逆に刺されてしまうのですが、「痛いよぅ、痛いよぅ」と言われながら刺されているところがかなり衝撃的でした。息子に対する異常な愛情をもった母というのはしばしば映画の題材にもなっていますが、この母親程怖い人は見た事がありません。また、今ではすっかり名俳優の1人となった水谷豊さんの若々しい頃の演技がとても新鮮でした。原田美枝子さんの脱ぎっぷりもよかったです。17歳にしてこのセクシーさは現代の若い子にはない魅力ですね。他にも地井武男や桃井かおりなど今考えるとすごく豪華な俳優陣が出演していて見応えがあります。ストーリーはとても重く、心苦しくなる場面が多々ありますが、日本映画界に勢いがあったころの風を感じることができるいい映画だと思います。監督の長谷川和彦さんは、この映画のあと、あの伝説的な映画「太陽を盗んだ男」を撮って、その後現在まで30年以上に渡って沈黙しています。たった2本の映画しか撮影していないにも関わらず熱烈なファンが多い監督で、私もその一人として生きている内にもう一本でいいから長谷川監督の映画が見たいと常々思っています。

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